日本放射線影響学会 / THE JAPANESE RADIATION RESEARCH SOCIETY

書評:Radiobiology Textbook

論文標題
著者 Baatout S編
雑誌名・巻・
 ページ・発行年
総頁数:667ページ (電子版無料、印刷版7149円)、2023年9月発行、Springer Cham
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生命科学、放射線治療、ヒトと環境の放射線防護といった放射線生物学の基礎から応用まで、そして放射線生物学の黎明期から最新の知見まで、広範囲に網羅するとともに、倫理や法律といった側面にも触れている放射線生物学の教科書が刊行されたので、ここに紹介する。
本書は、Sarah Baatout先生(ベルギー原子力研究センター)が編集、126名の専門家が執筆、23名の専門家が査読された。12章構成で、1章は放射線生物学の歴史、2章は放射線生物学の基本概念、3章は分子放射線生物学、4章は機構・モデル化・線量放射線生物学、5章は放射線腫瘍学のための臨床放射線生物学、6章は放射線治療と他の治療方法との併用に関する放射線生物学、7章は放射線個人感受性とバイオマーカー、8章は事故被ばく・公衆被ばく・職業被ばくの放射線生物学、9章は環境放射線生物学、10章は宇宙放射線生物学、11章は放射線防護剤・緩和剤・増感剤、12章は放射線被ばくの倫理・法律・社会・疫学的な考慮について述べられている。
各章の最初には、学習の事項と目的が述べられており、問題意識をもって各章を読み進められる。各節のポイントや補足事項を端的にまとめた「Box」コーナーが170以上あるとともに、図表が300以上あることで、理解が深まる。130以上の演習問題があり、回答も示されているので、理解度を確認できる。オープンアクセスとして刊行されているため、PDFと電子書籍のファイルを全て無料でダウンロードでき、タブレットやスマートフォンなどのデバイス上で読むのにも便利である。放射線生物学の教育に従事している先生方やこれから放射線生物学を学ぶ方々にはもちろんのこと、既に放射線生物研究や放射線業務に従事されている方々にも勧める。